倉山満 13歳からの「くにまもり」 感想

倉山満 13歳からの「くにまもり」 感想

倉山満先生の扶桑社新書の新刊!

タイトルに「13歳からの」と銘打ってある通り、非常にわかりやすい。
難しいことは何も書かれていません。

ここまでスラスラ読めて本質を語っている本がかつてあったのでしょうか?

最初から最後まで徹頭徹尾、正論が書かれています。
なおかつ面白い。

しかしながら、ここに書かれていることを知らない人も多いのではないかと思わずうなってしまいました。
例えば「良いデフレなどない」とか、「自衛隊は、有事の際に日本を守れるように作られていない」とか。

倉山先生の本は、憲法、政治、歴史、国や時代も多岐にわたります。
どれも読みやすいのですが、自分自身の得意、不得意もあるので読みやすさには個人差があります。
しかしながら、読んで行くと、バラバラだったものが、突然「カチッ」とはまる瞬間があります。
そう、完成図を見せられていないジグソーパズルを必死で組み立てていたら、いきなり絵が現れ、全体像が見えてくるかのように!
倉山満先生の著作に限ったことではないのかもしれません。
一人の著者の本を何冊も読みこむ醍醐味とはまさにそれですね。

好きな著者の本は全部読む、と決めて読めば一番早くその境地に到達できると思います。
著者が「本物」かどうかに気付くための早道でもあります。

さて、こちらの『13歳からの「くにまもり」』は、最初から「倉山満」という著者の全体図をわかりやすく描いている本でもあると思います。

ネタバレになりすぎない程度に、こちらの本の読むべきところを書いていきたいと思います。

・日本が好き!でも今の日本の現状はどうにかしたい、ではどうしたらいいの?

まず、はじめに倉山先生はこう言います。

「自分が日本を守る責任者ならば、何をするか。そして、何を知っておかねばならないか」
つまり、自分が総理大臣だったら、何をするか、何を知っておかねばならないのかを考え、学べと。

ハードルが高いですか?
そんなことはありません。

自分が日本をしょって立つ立場ならどう考えて、どう学び、どう行動するか?
そのように学んで、足軽の子だったのに本当に総理大臣になった人物がいます。
伊藤博文です。

本来なら日本の行く末など考える必要がなかった立場の人です。
伊藤は、松下村塾で吉田松陰にそのように学べと教えられ、それを実践しました。

日本のあらゆることが変わってしまった、維新の時代だったからなしえた夢物語に聞こえるかもしれません。
しかしながら、徳川幕府が260年続いた時代に、その幕府が倒され、十数年後に、足軽の子供が日本の最高権力者になるなどと、誰が考えたでしょう!

「総理を目指せ!」と言っているのではありません。
そのように考えて学べば出来ることは必ずあります。
ただ本を読んだり、知識を頭に詰め込むのと、学んだものを、どう使うかを考えながら学ぶのでは、全く見える景色が違ってきます
勉強は押し付けられてするものではなく、自らのためにするものです。
若い人こそ、そのことに早く気付いて実践して頂きたいです。

・「人を殺してはいけない!」 それが当たり前の日本、当たり前で無い国に囲まれている日本

なぜ日本は素晴らしい国なのか?
地理的な理由もあるのかもしれません。
四季があり夏は暑く、冬は寒い。
暖かい春には美しい花が咲き乱れ、秋は黄や赤に染まった、目にも鮮やかな山々が見られる。
そんな我が国日本では、「人を殺してはいけない」ということが古代から「当たり前」のこととして根付いています。
「人を殺してはいけない?今は、それ普通でしょ?」とお思いになるかもしれません。

では、日本の周辺諸国の現実は?

北朝鮮は?
親族である高官ですら、処刑されたり暗殺されたり。
庶民は貧困にあえいでいるのに、大きなお金が必要な核実験を繰り返し、何度もミサイルを撃ってきています。
そして、我が国の何の罪もない人達を誘拐して、返していません。

中国は?
チベットやウイグルで民族浄化と呼ばれることが起こっているのは、現在では多くの人が知っていることです。
少数民族だけではなく、権力者の政敵になればどのような目にあうかわからない。
仕事で行ったはずの日本のビジネスマンですら、なぜか拘束されることも起こっています。

ロシアは?
現在の最高権力者プーチン大統領の政敵や、プーチンのことを追っているジャーナリストが不審な死を遂げていることは、誰もがが知っていることです。
そちらは、私が感想を書いている「倉山満 「嘘だらけの日露近現代史」 感想」や「グレンコ・アンドリー プーチン幻想 「ロシアの正体」と日本の危機 感想」にも詳しいです。

韓国は?
日本の保守の人の中には「どんな国より、韓国が嫌い!」と言う人達がいますが、一応、「人を殺してはいけない」の建前があるはずの国です。
しかしながら、産経新聞の記者が不当に逮捕、勾留されたことがあるように、人権ということに関して、怪しくなっている部分があります。
失脚した大統領が、逮捕されたり、不審な死を遂げることが多いことも知られています。

アメリカは?
先の大戦を通じて一番日本人を殺しています。
占領期も国際法違反なことを誤魔化して、憲法を変えさせたりと散々なことをやっています。
しかしながら、「人を殺してはいけない」ということに関しては当たり前だということが通じる国です。
例え、度々、銃乱射事件などが起こってそれによって人が亡くなっていても、です。

では、そのような危険があるにも関わらず、軍隊を持たない日本が、戦争を吹っ掛けられたりしないのはなぜでしょうか?

日本には世界に誇る平和憲法があるからでしょうか?

そんなはずはありません。

日本には世界一の軍事力をもつアメリカの軍隊が駐留しています。
何かあったら彼らが出てくるかもしれない、だからどこの国も攻めてこないのです。

日本を守っているのは、憲法9条ではなく、日米安保条約です。

日米安保条約は集団的自衛権のための条約です。
日本に米軍が駐留しているのが、集団的自衛権そのものです。
4年前「戦争ができる国になる!」と大騒ぎした平和安全法案ですが、成立して、日本は戦争ができる国になったのでしょうか?
拉致被害者を北朝鮮に取り返しに行けるようになったのでしょうか。
(あのバカ騒ぎはなんだったのか...あまりに悲しい)

さらわれた人も取り返せない現状をどうすれば良いのか。
小泉政権の時は憲法の条文を変えずに、5人とはいえ取り返しました。
なぜそれが出来たのか、歴史を学べば出来ることはおのずと見えてくるはずです。

・自衛隊は軍隊ではない!それどころか、日本を守れるように最初から作られていない!だから憲法改正!それほんと?

敗戦による占領。
押し付けられた憲法。
憲法9条を読めば、日本は軍隊を持てないはずですが、自衛隊が存在しています。
多くの憲法学者が、自衛隊を違憲と言っています。
だから、自衛隊を憲法に書きこまなくてはいけないという人達がいます。
では、自衛隊を憲法に書きこめば、軍隊になり、戦争ができるようになるのでしょうか?
そもそも、自衛隊は有事に日本を守るように作られていないのはご存知でしょうか?

日本は軍隊を持つな!と押し付けてきたのはアメリカですが、朝鮮戦争勃発で「再軍備せよ!」と言ってきたのもアメリカです。
何を勝手なことを!と思います。
そこで再軍備出来ればよかったのでしょうが、当時の日本にはお金がありませんでした。
日米の妥協で「軽武装」することになりました。
軽武装と言うのは、首相官邸を中心とした首都機能や、主要飛行場、東京湾をはじめとする主要港湾、さらに東海道線のような主要幹線を最低限自力で守ることの出来る陸上兵力、アメリカから勧告された兵力は、三十二万人(原子力発電所の防護は含まない)でしたが、お金がないので、陸上自衛隊はまずは十八万人にすることが目標となり、なぜかその十八万人が上限になってしまって今に至っているそうです。

元々そのように設立され、そのままの規模ですので、何か起こったら自衛隊では日本を守れないのは当然ですよね。
現在も予算が全く足らないので、戦い続けることも出来ません。

そして、法律が彼らをがんじがらめにしています。
ご存知の方も多いと思いますが、軍隊の法体系は「ネガティブリスト」と言って、やってはいけないことが列挙されています。
敵が攻めてきているときに、いちいち何をして良いのかを判断し、許可を取りながらでは戦えません。
片や自衛隊の法体系は「ポジティブリスト」です。
やれることの列挙、これは警察・消防と同じです。

警察が、まだ有罪となっていない人を犯人かもしれないということで逮捕する際には、逮捕状を取る必要があります。
消防士が、火事の際の消火活動で、火が近隣の家屋に燃え広がらないために、家の一部を破壊することがありますが、それもどのような場合に行ってよいかの規定が消防法にあります。
場合によっては著しい人権侵害になる可能性がある警防の活動は、法律で規定する必要があるのです。

それでは自衛隊は?

やっていいことが列挙されている「ポジティブリスト」。

そのような法体系でいざという時に戦えるのでしょうか?
戦争で、敵がこちらの都合の良いように戦ってくれるはずがありません。

予算も足らない、法律でもがんじがらめにされている、そんな自衛隊が憲法に「自衛隊」と書きこんだだけで、戦える組織になると考えるのは、夢物語だと私は思います。

・日本ってどんな国?日本の歴史は皇室の歴史。皇室を守るための合言葉「先例、男系、直系」

私が子供の頃は「中国三千年」などと言っていました。
最近は4千年だったり、6千年だったりするそうですが、本当でしょうか?
中華人民共和国が出来たのは1947年です。
明治の頃あった「清」という国は、現在の漢民族の国ではないはずです。
今の中国とは違う国ではないでしょうか?

では日本が日本と呼ばれるようになったのはいつかご存知ですか?

「皇紀」とは何かご存知でしょうか?
初代神武天皇の即位を元年として、現在皇紀2679年です。
神武天皇は本当に実在したのかとかは、わりとどうでも良いことです。
そもそも神話とか、初代の王が本当に特定できる日本と同じくらい古い国があるのでしょうか?
あまりに昔で確認できませんが、古事記、日本書紀が制定されたときはそのように(初代神武天皇が即位した、その時期)伝わっていたということです。

我が国が「日本」と呼ばれるようになったのは、大宝元年(701年)と言われています。
「日本」が「日本」呼ばれる。、ずっと前から天皇・皇室は存在して、日本の中心にいるのです。
時と共に権力者は入れ替わっても、そのことは変わりませんでした。
戦争で負けた多くの国は、国王などの最高権力者は逃げ出したり。
あるいは国民投票によって王政を廃止されたりしましたが、日本国民は皇室を無くそうなどは考えませんでした。
そして、時の昭和天皇は国民と共に歩まれました。
昭和天皇は、東京大空襲でお住まいを焼かれたあと、吹上の御文庫を借御所として、国民が元の生活に戻れるまで共にとどまられたそうです。
日本と日本国民の中心にあり続けた皇室。
日本の歴史は皇室の歴史なのです。

皇室や天皇が歴史そのものであるように、皇室は先例を重んじます。
今年、御譲位により、平成から令和へと元号が変わり、新天皇が即位されました。
現在の天皇陛下のお子様は敬宮愛子内親王だけです。
皇室典範によって皇位継承は男系の男子のみと決まっていますので、次の天皇は秋篠宮殿下。
その次は悠仁親王殿下となります。

改元直後から「愛子天皇」を望む声がマスコミを中心に取りざたされました。
愛子内親王殿下は現在の天皇陛下のお子様で、男系の女子です。
皇室の長い歴史には女帝もいましたので、愛子内親王が天皇になるのは先例があります。
しかし、その後はどうするつもりなのでしょうか?
愛子内親王がご結婚なさって、男の子が生まれても、その子は男系ではないので、皇位継承資格はありません。
そもそも、なぜ悠仁殿下がいらっしゃるのに、それを差し置いて、愛子内親王を天皇にしなければならないのか。
長い歴史の中では、やはり自分の子を天皇にするための皇族間での争いがありました。
無理に皇室典範に手をかけて、愛子様を天皇に推す人達は、そのような争いを起こさせたいのでしょうか?

・まずは経済されど経済、日本を守るためにはとにかく経済

強い経済」を打ち出し、「デフレ脱却するまでは消費増税しない」と言って、政権を取り、首相に返り咲いた安倍総理。
7年たっても完全に景気回復もデフレ脱却も出来ないまま、二度目の消費増税がなされようとしています。

先日のブログにも書いた内容と被ります。
日本の中学生向けの教科書にはまるで富国強兵が悪いことと思わせるような書き方がされているのですが、なぜ富国強兵が必要なのか?
元勲たちはそれにつき進んだのか?

日本が主権国家として、外国に支配されないためです。

現在、日本は強兵どころか、軍隊も持てず、頼みの自衛隊も予算不足と法律でがんじがらめです。
せめて、経済くらい強くなって、お金で外国にいうことを聞かせられるくらいにならずに、どうやって拉致被害者を取り返すのでしょうか?

外国相手の話だけではありません。
経済成長せず、何十年も国民の給与は上がらない。
若い人にとって、結婚も子供を持つことも贅沢で、優秀な人ほど、「もう日本にいても未来がないから海外へ」などと言った声が漏れ聞こえる状況。

そもそもなぜデフレがダメなのか?
ものの値段が安いままならその方がお得なのでしょうか?
デフレというのはモノよりも、お金の方が価値がある。
つまり結果、働いた成果ある給与も上がらなくなるということです。

インフレならば、ため込むより使った方が良いし、何より給与が上がるとわかっていれば、安心して使えます。
デフレだとお金持ちはに貯めこみ、働いても給料が上がらないので、所得が低い人は使えず、生活が苦しくなる。
お金を持っている人も使わないので、さらに景気は上がらず、、、という所謂デフレスパイラルに陥ってしまいます。

これをどうにかするには...
それにはまずお金を刷ることです!

インフレターゲットという所謂アベノミクスの主要戦略ですが、これは「インフレ率を2%にするまでお金を刷り続ける」という約束をすることです。
実際、それを安倍政権がやった途端、景気が急激に回復ました。
しかしながら、それを消費増税で冷え込ませてしまいました
そして、今年の10月には二度目の増税

何のために増税をするのか?

税収を増やすためではないのでしょうか?
景気が悪い時に税率だけ上げても税収が増えないのは、高校の教科書にすら載っています。
「増税しても景気が悪くならないように対策する!」など、「増税すれば景気が悪くなると、白状しているのと同じで、「だったら景気が悪くなるなら増税やめろ」で終了です。

日本の政治家はバカなのでしょうか?

私達は、「勝てない戦争をやって、多くの国民を死なせ、苦しめた戦前の日本は愚かだった」と教えられます。
では、現在の「景気が悪くなるけど増税する」と言っている政府を支持している国民は愚かではないのでしょうか?
少なくとも戦前の日本人を笑ったり、たしなめたりする資格はないと思えます。
現在の野党はダメだから、自民党しかいない?
ではなぜダメな野党しかいないのでしょうか?

選挙制度があるのに、まともな政治家を選べない現状。
この現状をどうしたら、変えられるのか。
それを考え、実行するためにも学ぶ必要があるのです。

・今日と同じ日が続くのが幸せな国だった日本、これからもそうなの?

こちらの本は6年前に出版された『保守の心得』倉山満 保守の心得 感想)の続編ともいえる作品です。

『保守の心得』の「はじめに」と「おわりに」を何度も何度も読みました。

『13歳の「くにまもり」』でも取り上げられていますが、延暦寺の「不滅の法灯」
こちらのエピソードは本当に大好きです。
開祖である伝教大師最澄がともした法灯に油を「ひと差しだけ」注ぐ。
たったそれだけのことを1200年も絶やさず、続ける。

世界で一番、長寿の国、我が日本。
昨日と同じことを、今日やり、今日やったことを明日もやる。
それが幸せだったはずなのに、現在は未来に多くの不安を、特に若い人達は抱えているのではないかと思います。

新しいことに挑むことは大切です。

しかしながら、明日も知れない状況では、挑戦することも覚束なくなるのが現実です。

若い人が、夢を見られるように、希望を持てるように。
若い人達に「学べ!」と言うだけでなく、年寄りの私ももっと頑張らねば、と改めて考えさせられました。

こちらの著書『13歳からの「くにまもり」』は、シンプルに大切なことだけ書かれた良書です。
是非多くの若い人達にも、かつて若者だった人達にも手に取っていただきたいです。