倉山満 ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔 感想

倉山満 ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔 感想

大人気、「嘘だらけ」シリーズの1冊目、『嘘だらけの日米近現代史』
それから本著の冒頭にあげられているように17冊にもわたって、ウッドロー・ウィルソンに対して批判を続けてきた倉山満先生による、ウッドロー・ウィルソンに関しての1冊。

倉山先生お腹いっぱいです!

ウッドロー・ウィルソンに関して一般的にはどのように認識されているのでしょうか?

教科書的に言えば、「世界平和と国際協調をうたう国際連盟の設立を唱えた偉人。その功績でノーベル平和賞を受賞した」といった感じでしょうか。

倉山満先生の著作を読んだ人なら、それがどれほど表面的なものかご存じでしょうし、こちらの著書のタイトルでは「全世界を不幸にした大悪魔」とまで呼ばれてしまうウッドロー・ウィルソンとは果たしてどういう人物だったのでしょうか?

長老派の牧師の息子として生まれ、あまり学業の振るわなかった子供時代を経て、体が弱く、プレイヤーとしては下手なのに野球チームの議長になったり、弁論大会の最後の決戦で自分と反対意見の論者になると「自分の信条に合わない」と討論を放棄してしまうようなダメ弁論部員なのに弁論部長になったり、弁護士事務所を設立してから弁護士資格を取ったり、無能なのか、謎のカリスマがあるのか、非常に不可思議な経歴の持ち主です。

45歳でプリンストン大学長に就任して、そのころに「私は政治家となるべく生まれてきた」と政界に進出、共和党が現職大統領のタフトと元大統領のT・ルーズベルトが争い、敗北したルーズベルトが第三党を作って大統領選にうって出て、その漁夫の利を得るように最低得票数でウィルソンが大統領に。
ウィルソンにとってはそれこそ「自分が大統領になったのは神が定めたこと」だから、当たり前のことなのでしょうが、世界にとってこれがどれだけ不幸なことだったか。

こちらの著書で参考文献として使われているのが、ジグムント・フロイトとW・Cブリットの共著である『ウッドロー・ウィルソン―心理学的研究』
フロイトの分析によると『父と自分=神とキリスト』だったとか。
中学生くらいの子供が自分をキリストだとか言っていれば、「こじらせてるなあ」で終わりでしょうが、ウィルソンの場合、アメリカ大統領にまでなってしまったことで、さらにこじらせてしまったような気がします。

中学の教科書などを読むとしれっと「1917年にはアメリカ合衆国も連合国側に加わりました」などと参戦理由も書かれずに記載されますが、そもそも欧州大戦たる第一次世界大戦になぜアメリカが口を出し、参加したのか。
講和会議でなぜ、ウィルソンが国際連盟の提案し、さらにその国際連盟になぜアメリカは加盟しなかったのか。
そもそも大統領であるウィルソンが、国を空けてわざわざ講和会議に出張る必要があったのか。
教科書を素直に読んだだけではわからなかったことが、こちらの著書を読むといろいろわかります。
「ウィルソン、おかしいだろう?」と。

特に講和会議前後のウィルソンの行動や言動など、常軌を逸しています。
側近のハウス大佐に「(講和会議では)わたしが議長に選ばれることと思う」などと、電報を打ち、外交上の慣習から、議長はフランスのフランスのクレマンソー首相ですよ、と返信され、講和会議への出席は賢明でないと返されても、やはり自分が講和会議に出席する。
野党共和党に講和会議への随行協力を申し出られるのに断る。
挙国一致で重大な会議に臨まずに、その後どうやって国をまとめるのか。
こういった流れをわからずに、「アメリカは国内の反対で国際連盟に加盟できなかった」と書かれてもさっぱりわかりませんよね。

そしてウィルソンと言えば「十四カ条の平和原則」
「秘密外交の廃止」「軍備の縮小」「植民地問題の公正な措置」など聴こえはいいですが、今までの積み上げてきた国際秩序を破壊、民族紛争を煽るもの。
その後の第二次世界大戦、共産主義の台頭、現在まで続く民族紛争の引き金に。

もちろん、世界の厄災のすべての原因がウッドロー・ウィルソンにあるわけではありません。
大戦で疲弊したそれまでの列強がウィルソンという狂人を抑えられなかった。
そして、何より、それを抑えられたはずの大国である大日本帝国が、大事な講和会議でサイレントパートナーに徹してしまったことの責任は大きいと思います。

現在、大統領選で民主党のバイデンが勝利したことで、「不正選挙だ!」「世界が滅ぶ!」などと不安を煽っている人たちがいますが、それが何になるのでしょうか。
ここまで長い間不況が続いているにも関わらず、日本は世界第3位の経済大国です。
我々が生きているこの世界に責任があるというのならできることは必ずあるはずです。

嘆かわしいのは当のアメリカではウィルソニアンと呼ばれる人たちが大きな力を持ち、日本の学界でもウィルソンを称える人たちに逆らうような言論ができないこと。
今の状況では、子供たちが使う教科書では相変わらず、ウィルソンを褒めたたえるようなものであり続けるでしょう。
そのような表面的な言論に騙されないためにもしっかり学ぶこと。
こちらの著書、『ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔』
絶対におすすめですので、ぜひ手に取ってお読みください!!