倉山満「検証 財務省の近現代史」感想

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 今年の4月に消費税が8%に上がりました。現在は来年の10月に10%にするかどうかが議論されています。4月の増税でどのようなことが起こっているのかは、私の先日のブログでも書きました。このタイミングでの増税は絶対すべきではありません。

#反動減はリーマンショック級 10%の消費増税は無理

 なぜ財務省はここまで増税を強力に推し進めるのでしょうか。本書は財務省がどのような官庁なのか、その150年の歴史を膨大な資料の下に解き明かします。

 この本を読むと、財務省がいついかなる時も増税に邁進していたわけではないことがわかります。それどころか戦前の日本を増税の無限ループに追い込んだ馬場鍈一が、『大蔵省史』『大蔵省外史』でかなり批判的に書かれているそうです。では、なぜ今のような増税原理主義の官庁に変わってしまったのでしょうか。

 戦後の大蔵省はGHQを手玉に取りつつ我が国を守り、健全財政によって日本を立ち直らせる役割を果たしていました。しかし昭和40年の佐藤内閣の時の一時的な不況による赤字国債発行、その後の田中角栄内閣時の極端な積極財政、財政政策を真面目に考えない三木内閣に至り、昭和50年にふたたび赤字国債を発行、この年から今に至るまで平成2~5年を除いて赤字国債は連続して発行され続け、彼らの考える健全財政を貫くことが難しくなっていきます。
 戦前の馬場財政のトラウマか、高度経済成長が続いているまっただ中にも関わらず大蔵省は徹底した歳出削減を求める「財政硬直化打破キャンペーン」を始め、健全財政の枠組み作りを研究するのですが、内閣法制局にその研究の一部をつぶされ、三角大福(三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫)との政争の中、万策尽き増税へと邁進していきます。

 増税がいついかなる時も悪だとは思いません。しかし、今の財務省のやっていることは健全財政のために国民を滅ぼすことになっているような気がします。この本は、「増税は財務省の伝統ではない。正しい歴史を知ってほしい。」との倉山先生の思いから書かれています。

 なお、こちらの本が書かれたのは野田政権の発足直前です。その後の財務省の歴史、および8%の消費増税が決められた経緯については「増税と政局・暗闘50年史」に詳しく書かれています。こちらの感想は当ブログに上げていますのでこちらも合わせてお読みいただけるとありがたいです。

倉山満 「増税と政局・暗闘50年史」感想

 本来、国民のために働く政治家や官僚たちが、自分たちの利権や私欲のために国を滅ぼすようなことをするのは大変に嘆かわしいことです。税収の増えない増税をやり通すことに何の正義があるのでしょうか。今一度、自分たちのやっていることが誰を利し、誰を苦しめるのかよく考えて行動してほしいと思います。

※こちらの記事は平成26年10月23日に書かれています。