倉山満 「増税と政局・暗闘50年史」感想

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 4月10日に出た新刊。この本は歴史にするにはまだあまりにも新しい、去年10月1日に決断された消費税8%の決定の背後で何が起こっていたかを、現在知りうる情報をすべて集めて書かれた、憲政史研究家 倉山満先生の渾身の作品です。

 前半は今回の消費税政局の話、後半は財務省(大蔵省)と政治家がいかに争い、あるいは協力しつつこの国を運営してきたかを増税に焦点を置きつつ描いたもの。後半は光文社新書の「検証 財務省の近現代史」の補強版のような感じです。

 前半は、当時のマスコミの迷走ぶり、消費税は本当にあげられてしまうのか、そしてあの10月1日の安倍首相の会見を固唾をのんで見守っていた当時の自分を思い出し、ちょっと苦しくなってしまいました。増税したら税収は減る、景気は悪くなる。誰もがわかっているのになぜそれをやるのか。この国の政治家、官僚はいったい何を考えているのか。この国はどうなってしまうのか。長かった民主党政権が終わり、安倍首相を迎え、景気は回復し始め、いろんなことがうまくいき始めたように見えたこの時期に、なぜこんな決断を安倍首相はしてしまったのか。安倍首相の心の中など誰にもわかりませんし、政権についている間に、首相が本心を語ることはないでしょう。増税を決めた政権が支持を失うのは歴史をたどれば明らかなことです。なぜそれをせざるを得なかったのか、今考えられうる答えがこの本の中にあります。

 4月1日に、消費税は8%になりました。消費税が決まる直前のマスコミは、まだ安倍首相が決断していないのに(菅官房長官が明確に否定しているのにもかかわらず)、何度も何度も「安倍首相、消費増税を決断」と報道しました。「消費増税やむなし」と言いながら「新聞は軽減税率を適用すべき」などと書き立てる、恥知らずな新聞社もありました。間もなく消費税が上がる、という時期になると、「駆け込みするならこれ!!」と無責任にあおり、いざ消費税が上がると、それがどれだけ家計に負担になるかと批判する。いったい何のために彼らは仕事をしているのでしょう。それなら、なぜ消費増税を決断する前に、もっと反対の声をあげなかったのでしょうか。

 何人もの人が実名で批判されていますが、実際あの時口だけで消費増税反対を訴えながら、増税を阻止するために必死に動いてきた人たちを、後ろから撃つような真似をしてきた人たちを決して忘れることはないでしょう。その後も「倉山は読みを外した」だの「財務事務次官の木下康司が増税の黒幕だなんてデマを流すな」などと言っていた人は、財務省が増税にかかわっていない証拠をぜひ出していただきたいと思います。

 おりしも今週号の週刊現代に『安倍を操る「財務省の7人のワル」をご存知か』という記事が掲載されました。政治家は批判されるのに、実務の責任者は批判されない、というおかしなことがまかり通ってはいけません。国民の皆さんにこの消費増税を主導したのが、財務事務次官 木下康司様だということを知っていただきたいと思います。そして、次の10%の増税だけは何としてでも止めたい、そのためにいろんなことを周知していきたいと思います。

※こちらの記事は平成26年4月14日に書かれたものです。