倉山満 「軍国主義が日本を救う」感想

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 またまた過激なタイトルの本作。日教組の先生とか叫びだしそうです。

 最近安倍総理のことを独裁者だのファシストだのと言ってデモをやる人がいますが、彼らはファシストやファシズムの意味を分かっているのでしょうか。そもそも安倍首相がヒトラーのような独裁者だったら、安倍首相の首のマネキンをホイルローダーで引かせるようなデモができるはずがありませんよね。集団的自衛権の件で安倍首相を軍国主義者だという人もいますが、では集団的自衛権を認めていない国は世界で何か国あるのでしょうか。それ以外の認めている国はみんな軍国主義国家なのでしょうか。

 大日本帝国は軍国主義のファシスト国家だったなどと言う人がいますが、まずは言葉の意味を定義してみましょう。

 

 ファシズムとは一国一党、そして国家の上に党がある体制です。日本の隣国にもこんな国がありますが、左翼の人はなぜかそこの国のことをファシズムとは言いませんね。

 

 そして軍国主義とは国策の最優先事項が軍事になることで、国家主義を前提としています。つまり、国家の上に党があるファシズムと軍国主義は相いれないものなのです。そして大日本帝国はファシズムではありえませんし、軍国主義でもありませんでした。これに関した考察は中に詳しいのですが、大日本帝国は軍国主義に徹することが出来ずに滅んだと言えます。

 本書では日本人があまりに軍事に対して無知であること、憲法だけではなく国民の意識や法律、財務省、防衛省までもがいかに自衛隊を戦えない組織にしているかということなどが詳しく語られます。

 読んでいると現在の日本がこれほどまでにひどい状況なのかと、かなり暗澹たる気分にさせられます。東日本大震災以来、いろんなメディアや書籍でもいかに自衛官が素晴らしいか、自衛隊がいかに強いのかが語られることも増えています。確かに、これだけ予算もつけてもらえず、人員も増やされない状況での日本の自衛官の士気や能力の高さは称賛されるべきだと思います。

 しかし、今の自衛官のおかれている状況は国を守るために働いている彼らに対してあまりにもひどいと言わざるを得ません。しかも有事の際に彼らが動こうとしても法律が煩雑すぎて動くことが出来ない。

 自衛隊法はポジティブリストではなくネガティブリストにしなければならないと、以前から言われていましたが、今回の集団的自衛権の解釈変更でも、出来ることを全部法律で決めるような議論になってしまっています。それでは自衛隊は自由に動けませんし、敵に出来ること、それしかやれないことを教えてしまうことになってしまいます。どうしてこのような議論になってしまったのでしょうか。日本を戦えない国にしたいのはいったい誰なのでしょうか。

 本書の内容ですが、どちらかと言うと左翼よりも保守派に喧嘩を売っています。

 確かに戦争反対と叫びながら日本を弱体化させようとする反日左翼はわかりやすい上に、言っていることも筋が通っていないので論破することも簡単です。

 しかし、ザルのような特定秘密保護法や骨抜きにされた集団的自衛権の解釈変更で喜んでいる保守派はある意味左翼よりも筋が悪いかもしれません。全ての保守派がそうだとは言いませんが、憲法9条改憲をいう保守派の人で9条があるから拉致被害者を取り返せないという人は多々います。改憲が出来なければ拉致被害者を見捨てるというのでしょうか。改憲できなくても何が出来るのかを考えて行動すべきなのではないでしょうか。

 軍事と外交は一体のものです。つまり今の日本はまともに外交も出来ない状態にあるということなのです。私たち日本人があまりにも知らされていない、教わることのない軍事の最低限知るべきこと、そしてその上で私たちが何をすべきなのかを考えさせてくれる本です。後書きの倉山先生の言葉にはしびれます。

※こちらの記事は平成26年9月30日に書かれたものです。