倉山満 「間違いだらけの憲法改正論議」 感想

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 憲法改正といえば、よく話題になるのが、9条と96条についてですが、本当にそれだけでよいのでしょうか。自民党の出している憲法草案は何が問題なのでしょうか。

 改正するところがある、ということは今の日本国憲法には問題がある、ということになります。この本ではまず、日本国憲法の何が問題か、ということについて語られます。一言でいうと、何もかもがでたらめで話にならないということです。

 まず、成り立ちがでたらめです。日本にはもともと大日本帝国憲法がありました。敗戦後、GHQにより押し付けられた「マッカーサー3原則」をもとに、憲法に関してまるで素人の集団が作ったものを日本人が何とか憲法の形にしたもの、それが日本国憲法なのです。

 そもそも、占領時に憲法はおろか法律を変えることでさえ、よっぽどの事情がない限り国際法違反です。日本は武装解除していて、国内の混乱もなかったため、そのような必要がなかったのに、憲法を変えられてしまいました。

 無理やり押し付けられた憲法でも、内容が良ければいいじゃないか、という批判もあるでしょうが、その内容もめちゃくちゃです。どのくらいでたらめなのか、有事に関する規定がない、改憲に関する条文があるのにそれをするための附属法がなかった(国民投票法ができたのは2007年)、三権分立と言っていながら、国会は国権の最高機関?(政治的美称説とかわけのわからない説明が憲法学ではなされる。法律の条文に意味のないものを書き込むのは論外)などなど。

 では、あるべき憲法とはどのようなものでしょうか。それについて、「天皇」「人権」「議会」「内閣」「司法」「財政」「憲法」の視点から語られます。憲法とは何か、を突き詰めると、国がどうあるべきかということ、そしてどのように運営していけばよいかを考えることになります。それを思うと、他国から押し付けられたものを押し頂いていることの恥ずかしさ、それを条文だけちょっと変えれば何とかなると考えることの愚かしさがわかります。 

 憲法に限らず、法律に関しても、一番大切なのは条文を守ることではなく、どのように運用するかであると思います。憲法に書かれていることを守りすればよいのか、書いて無いことならばやらなくても、またはやっても法律違反にならないのか。憲法は国家の基本法なので、最低限の絶対守らなければならないことについて書かれなければならないのですが、書いてないから守らなくてよいということにはならないでしょう。

 日本は長い歴史と伝統を持つ国なので、慣習として積み上げられてきたものがあり、条文に書かれていなくても守られてきたものがあります。そして正しく運用するために、すべてを憲法の条文に書き込むのではなく、憲法附属法をもって運用するのが正しいあり方なのだと思います。

 とても読みやすい本なのですが、これを読んでいかに、憲法というものを普段自分がおろそかに考えているのか、条文だけにとらわれて中身のことを理解できていないかを思い知らされました(何しろこれでも条文は全部読んでいるし、勉強もしていたのだ)。今の状況では、自主憲法制定どころか、一語変えることすら何年後になるかわからない、ならば本当にあるべき憲法について、一人でも多くの人が学び、考えることが大事だと思います。

 ※こちらの記事は平成26年3月14日に書かれたものです。