上念司×倉山満 『「日本の敵」を叩きのめす!』感想

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 上念司先生と倉山満先生、中央大学辞達学会の先輩・後輩コンビによる対談。普段WEB番組の「チャンネルくらら」やトークライブで一緒に活動しているお二人ですが、共著は初めて、こちらは雑誌「voice」に掲載されていた「説教ストロガノフ」を大幅に加筆されたものです。

 まずVoice掲載時のタイトル「説教ストロガノフ」。こちらは雑誌Willの人気連載「蒟蒻問答」のアンチテーゼだそうです。問答が通用するようなちゃんとした人・国を相手にしていないので「説教」。このタイトルが決まるまで延々5時間話し合ったとか。こんなことを真面目に長時間話し合ってしまうようなところも好きです。

 本書で出てくる「日本の敵」は中国共産党、反日日本人、朝日新聞などで、お二人の痛烈な説教が繰り広げられます。途中、「銀河英雄伝説」になぞらえて話が進んだり、かなりきつい表現が入ったりしますが、内容自体は至ってまっとうで、国際情勢、日本経済、防衛、メディアなどの問題がわかりやすくするすると頭に入っていきます。そして、そういった解説としてだけでなく、敵のプロパガンダに騙されないための情報、逆にこちらからプロパガンダを仕掛けるための方法も手に入れることが出来ます。

 最近の倉山先生の著書はいろいろ考えさせられて、読後感が重いものが多かったのですが、本書は痛快、読後感すっきりといった感じです。ただ最後の倉山先生の結びの文章では厳しいことが書いてあります。よく倉山先生は「血と屍が足らない」という表現をするのですが、日本人はどうしても上品というか、相手を批判するにも、相手の立場や自分の保身を考えて中途半端になりがちなような気がします。反日勢力はこちらのそういった思慮などお構いなしに、こちらを叩き潰すようなことをしてくるにもかかわらずです。本書の最終章は「朝日新聞」についてだったのですが、先日、間違いを訂正した吉田清治の従軍慰安婦の強制連行の件、これのせいでどれだけ日本人が貶められてきたか、しかもこの件は出されてすぐにおかしいとわかっていたのに、結局32年間もそのままにされてきたのです。これや河野談話(河野談合)のせいで、現在でも海外で日本人は嫌がらせを受け、子供がいじめられる原因になっているのです。それなのに、朝日新聞をたたくことを「言論弾圧」だなどという人がいます。確かに報道の自由は日本国憲法の下で保障されています。しかしそれは「事実」である場合であって、虚偽の報道を繰り返す自由ではありえません。しかも、間違いを訂正した後も、言い訳に終始しきちんとした謝罪が行われているとは到底言えない状況です。こういった発言を繰り返す人たちを中途半端に叩いて、何が改善するのでしょうか。

 上念先生と倉山先生の著書に共通するのは、単に情報や知識をインプットするのではなく、それを使っていかに騙されないようにするのか、いかに戦うのかの「実践」のための本であることだと思います。今回は共著ということでより一層その側面を強く感じました。興味のあるテーマから読むのでも面白いのでぜひ手に取ってご覧いただけたらと思います。

 ※こちらの記事は平成26年9月22日に書かれたものです。