倉山満 『トップの教養 ビジネスエリートが使いこなす「武器としての知力」 』感想

倉山満 『トップの教養 ビジネスエリートが使いこなす「武器としての知力」 』感想

〇「どうなるか」ではなく「どうするか」全ての人に読んで頂きたい実践の書

倉山満先生の本は、常に読者に「どうなるか」ではなく「どうするか」を問いかけてきますが、今回の著書はまさに実践のための書です。
世界で戦える日本人になるために必要な教養とはいったい何でしょうか。
最近では小学校でも英語が必修科目になっていますが、はたして英語が話せれば世界に通用する日本人と言えるのでしょうか。
必要なことは知識だけではなく、その知識をいかに相手に見据えつつ使えるか。
こちらの著書では、その身に着けた教養を「武器」として使う方法が語られています。
書いてあることを鵜呑みにするのではなく、自分自身で考えて使うことの大切さが伝わってきます。
単なる暗記ではなく「脳みそに汗をかく」ことの大切さ、他人の決めたことではなく自分自身で決断し、生きることの大切さについて深く考えさせられる本です。

〇トップに必要な最初の教養は決心

こちらのタイトルにある「トップの教養」
では本で紹介されている「教養」はトップになる素養のあるほんの一握りの人にしか必要のないものなのでしょうか。
この本でいう「トップ」とはどのような人達をさすのでしょうか。
倉山先生は「トップに必要な最初の教養は決心」と語ります。
すべての人にトップになる能力や気概があるわけではありません。
誰かが決めたことに従う方が楽ですし、人の上に立ち、指導者になればそれだけの責任が伴います。
しかしながら、自分の生活や人生で降りかかってくる理不尽に対して、全部受け身でなすがままで生きていくことが本当に幸せなのでしょうか。
国政を左右するような重大な決断でなくとも、自分の人生に係ることを人任せにするのではなく少しでも自分で決断する。
その小さな積み重ねが次第に大きなことに繋がっていくのではないでしょうか。
他人まかせではなく、自分におこることは自分が責任をもつという覚悟。
それこそがこのグダグダな日本の状況を変えるための最初の一歩だと思います。

〇戦いに必要なのは兵隊と武器

ここでいう「兵隊」とは仲間のことであり、「武器」は教養です。
大きなことを成し遂げたいと思ったとき、一人でできることは限られています。
同じ志を持つ仲間がいて、その数が増えれば大きな力となります。
仲間を増やすためにも教養が一つの絆となります。
倉山満先生が主催する倉山塾はまさにその一つです。
オンライン上の塾ですので、どこにいても参加して学ぶことができます。
全国に人がいるため、地方支部を作って、日本中でリアルに勉強会が開催されています。
そこでは支部員が進んで、自らの課題を発表し、その知識を支部員で共有しています。
そして、お互いの学ぶ姿を見ることで、信頼関係を深め、仲間を増やしています。
「教養」という武器を共有することで、仲間を増やし、さらに教養を深める。
私自身も所属しているため、倉山塾の話をしましたが、仲間を増やす方法だけではなく、著書では軍隊に学ぶ組織論についても詳しく書かれています。
仲間を増やすだけではなく、その組織をいかに運営していくかは、上に立つ人間にとっては必須のスキルですし、トップでなくとも組織に所属している人にとっては、知っておくべきことだと思います。

〇トップを目指す人は織田信長に学べ!

織田信長と聞いて皆様はどのようなイメージを持つでしょうか。
超人のようにやたら持ち上げられたり、かと思うと、明智光秀に対して髪をつかんで叩きつけて恨みを買っただの苛烈で非常な面が強調されたりしています。
しかしながら、倉山先生は信長は「努力の人」だったと語ります。
信長に関して34歳までの信長とそれ以降の信長という視点で、前半の信長は今でいう「1000億円の財産を築いたIT社長」、後半の信長を「天下布武」の理想を掲げて死ぬまで戦いの日々を続けた。
一生遊んで暮らせる立場を捨てて、なぜ信長は戦い続けたのか。
現在グダグダの状況の日本を何とかしたいと思う人にとって、信長の生き方は学ぶことが多いといえます。
しかしながら、最後に一番信頼していた明智光秀に裏切られてしまったという反省も同時に学ぶ必要があるでしょう。
部下をいかに育てるか、組織をどのように運営するのか、歴史に学べることは本当に多いです。

織田信長に関しては、倉山満先生の『大間違いの織田信長』という大変面白い、今までの信長像とは一味違う著書がありますので、こちらを読んで信長についてもっと学びたいと思った方には一読をオススメします。

〇瀧本哲史氏への思い

教養や知識を「武器」として例える。
これを見て、昨年亡くなった瀧本哲史氏の著書、『僕は君たちに武器を配りたい』を思い起こした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

瀧本氏は倉山満先生の大学生の時の弁論部の先輩で、上念司先生と共に、倉山先生を言論人として世に出して下さった方の一人だそうです。
「おわりに」でタッキーさんこと瀧本哲史氏への想いが語られています。
タッキーさんの教え、「人を命懸けにさせる本を書くこと」
その思いがあるからこそ、倉山先生は情熱をもってこれだけ多数の著書を出版し、言論活動を続けているのだと本当に頭が下がる思いがします。

 

 

こちらのチャンネルくららの著書紹介の番組で、「感動、伝達、参加」は瀧本氏の言葉だということが明かされています。
「感動、伝達、参加」は倉山塾での『帝国憲法講義』でも語られているのですが、その言葉をきっかけにして、私自身もブログを始めました。

ブログ開設1年! すめらみこといやさか!

上念司先生とともに、倉山満先生を世に出してくださった瀧本哲史氏に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

こちらの著書ですが、作中にも読むべき教養書が多数紹介されていますが、巻末の倉山先生が一言添えた参考文献集が非常に面白いです。
本を読む際に是非参考になさって見てください。