倉山満 「嘘だらけの日韓近現代史」感想

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 『嘘だらけ』シリーズ3作目。思うにこのシリーズは倉山先生流の憑き物落としではないか。

 憑き物落としとは何か、ということに関しては京極夏彦先生の『百鬼夜行シリーズ』を読んでいただきたいのですが、古本屋であり神主でもある京極堂こと中禅寺秋彦の行うある種の脱洗脳の手段です(こんな説明ではちょっと不足ですが)。

 『嘘だらけの日米近現代史』では「憎き相手でありつつも仲良くしていかなければならない同盟国に対して、事実に基づかない不必要なコンプレックスを抱いてはならないという観点」から

 『嘘だらけの日中近現代史』では「単純なアメリカへの反発、あるいは日本人が中国人の嘘に騙されて抱いてしまった幻想に対し、これまた変なコンプレックスを抱かないようにと」の観点から書かれています。

 現在の日本はいまだかつてないほどの嫌韓ムードにあふれ、ネットの国際ニュースには様々な韓国についての話題にあふれ、ネット動画の政治ランキングには必ず上位に韓国ネタがある。しかし、嫌いだからと言って騒いでそれでどうするのか。具体的にどうするのか、たとえば韓国を滅ぼそうというのか。ただ嫌韓を叫ぶことの意味はどこにあるのか。そしてそのことによって喜ぶのは誰なのか。倉山先生はそう問いかけます。

 実のところ私も大の韓国嫌いで『嫌韓流』も全巻持っていますし、韓国関係のニュースを見ては腹を立てていました。しかしこの本を読んで、すっと何かが落ちたのです。もちろん今でも嫌いなことには変わりありませんし、それこそ彼らの間違った歴史認識に基づくいわれなき攻撃に対しては断固たる態度をとらなくてはならないと思います。だからと言って、抗議するだけでは意味がない、何かを変えたいのならそのために具体的で、効果的な方法を考えなければいけないのです。

 おりしも昨日、南スーダンで、韓国軍に弾薬を無償譲渡したというニュースが入ってきました。ネットでは「なんで韓国なんかに!!」という意見であふれています。今までの私ならやはり同じようなことを言っていたと思います。しかし、今では問題はそこではない、と冷静に考えることができるようになりました。案の定、反対側の人たちは、「武器輸出三原則ガー」と騒いでいますが、韓国側の「日本はいわば殺人犯、レイプ魔なのに…」というやつあたりはさすがに斜め上をいってますね。

 倉山先生がよく言う「敵と犯罪者は違う」とはちょっとちがうかもしれませんが、韓国は確かにまったく理解しがたいし、関わりたくもない、しかし最も近い国でもあり、敵国になってしまったらはこちらに不利になる、本当に厄介な国なのです。この国とどううまくやっていくか。これは解決しようにもおそらく解決しない問題で、ずっと抱えていかなければいけないものなのですね(涙)。

 長々と書きましたが、内容的には相変わらず読みやすく、楽しく読ませていただきました。倉山先生は、常に自分にしか書けないものをと考えて、書いてらしゃるそうですが、前述したことのほかにも、知っている人ならクスっと笑ってしまうようなネタや、さらっと読むと気づかないようなとんでもないブラックな話まで。本当に楽しませていただきました。今年はもう1冊、来年はすでに3冊出版予定があり、先生の活躍にはこれからも目が離せません。

 ※こちらのブログは平成25年12月24日に書かれたものです。