田母神俊雄 『日本の敵』 感想

 

 田母神俊雄氏の5月22日の一審判決後初の著書!今後も続々出版予定だとか。講演の予定も多数のようで社会復帰に向けて着々と進んでらっしゃいますね。

 平成26年2月9日に行われた東京都知事選挙。そこで集まった1億3000万円の支援金。その10カ月後、衆議院選に出るときにはその金は1000万ほどしか残っていなかった。会計責任者が横領を自白、警察にも相談し調査している最中に、なぜか選対本部長であり、田母神氏の相談相手でもあった日本文化チャンネル桜の代表である水島社長が、自身の番組で平成27年2月17日に使途不明金疑惑を放送、田母神氏は記者会見を行うも、週刊文春でもその疑惑が記事になった。延々と続くチャンネル桜放送内での田母神氏への誹謗中傷。12月には水島社長は東京地検に田母神氏を告発。そして選挙後2年以上もたった平成28年3月7日に横領疑惑で東京地検特捜部の捜査が入り、4月14日に公職選挙法違反で田母神氏は逮捕。保釈請求するも169日にも及ぶ拘留。その長い拘留期間、田母神氏は心折れることなく、心身を鍛え、本を読み、思索し、その思いをノートにしたためた。そして、日本という素晴らしい祖国を守るため、もっと良い国にするため「日本の敵」と立ち向かうことを自分にあたえられた使命とした。

 ・敗戦利得者という存在

 「敗戦利得者」。田母神さんが一貫して戦ってきた敵とも言えます。皆さんご存知の通り、田母神さんは平成20年に最優秀賞を受賞した懸賞論文が政府見解と異なるということで航空幕僚長を更迭されました。「日本はいい国だ」という論文を書いたら、「何を言っている、日本は悪い国だというのが政府見解だ」ということで幕僚長をやめさせられてしまう。なぜこのような奇妙な事態になっているでしょうか。

 「敗戦利得者」という言葉を最初に提唱したのは上智大学名誉教授であった渡部昇一氏と言われています。GHQにより行われた公職追放、それによって戦後日本を担う中枢は赤く染められてしまいました。特にゆゆしき状態になったのは教育界と言えるでしょう。教育を乗っ取られるということは本当に恐ろしいことです。それによって子供だけではなく、親たちすらもコントロール下に置くことが出来るのですから。本書ではその「敗戦利得者」たる日教組や彼らにより刷り込まれた自虐史観に関して鋭く切り込んで行きます。

・田母神俊雄は親北派か?

 本書では「日本の敵」として第4章で「韓国と中国と北朝鮮」があげられています。ここでなぜ私が北朝鮮を取り上げたのか。田母神さんが保釈後、twitterで発信を始めたころから、度々チャンネル桜が田母神さんのツイートを取り上げて「田母神は親北派だ!」と言い、田母神事務所を巡る使途不明金疑惑に「外国勢力の匂いがする」と悪宣伝をしているからです。確かに田母神さんのツイートを見ると一見、北朝鮮は日本にとって脅威ではないと取れるものもあります。それでは田母神さんの真意はどこにあるのでしょうか。

 北朝鮮は核実験も行っていると思われますし、最近では頻繁に日本に向けてミサイル発射実験を繰り返しています。そのような国が本当に脅威ではないのでしょうか。田母神さんは言います。「実際にミサイルを撃ち込んだり、核兵器を使ったりしたらどういうことになるかは、かの”若き首領様”である金正恩(1984~)が一番ご存知のはずである。北朝鮮は日本やアメリカによって潰されることになるだろう(p152)」と。北朝鮮には、我が国に大規模侵攻を行うほどの海軍力、空軍力はない、ましてやアメリカを敵に回して戦争など出来るはずがない。考えてみれば当たり前のことで、戦争をするには必ず「戦争目的」があり、相手側から既に攻撃や侵略を受けているという切羽詰まった事情がない限り、勝てない戦争などしないものです。北朝鮮は日本やアメリカを敵に回して戦争など出来ない、だからやたらと北朝鮮に対して脅威を煽るのは、本当の敵から目をそらすためにやっているのではないか、田母神さんはそう指摘しているにすぎません。この辺りがただ勇ましいことを言って受けを狙う言論人とは違う、元航空幕僚長の田母神さんらしいリアリズムだと思います。

 では、本当に北朝鮮は脅威ではないのか。田母神さんは、北朝鮮を安全保障上の「日本の敵」という認識を過剰に持つ必要はないが、未だ解決を見ない拉致問題の方が現実問題だと言います。クアラルンプール事件や、ダッカ事件での対応のまずさ。それが拉致事件を引き起こし、さらに日本政府や、左派政党、マスメディアが拉致事件そのものを隠蔽したために深刻になってしまったと。「日本の敵」は内部にも潜んでいることが良くわかります。ここで本書では第一章で語られている「偽装保守」について述べたいと思います。

・「偽装保守」とは

 マスメディアや教育界は左翼に席巻されていたと言えども、政治に関しては所謂55年体制と言われたころから、短い例外の期間を除き、自民党が与党として政権を担ってきました。自主憲法制定、日米安保堅持を謳う保守政党であるはずの自民党、しかしながら実際はどうだったのか。

 ここで具体例として若いころから右派として有名だった中曽根康弘元総理のことが語られています。彼の一声で始まり、続く竹下登総理が引き継いで1988年から始まった日米共同開発はまさに日本の国益を損ねるもので、田母神さんはその決定される過程をそのまま見てきたのだそうです。外からではなく、現場で見てきた人の言葉には重みがあります。当時の日本の技術が如何に素晴らしかったか、そしてそれに対してアメリカが何をやってきたのか、その結果日本はどうなってしまったのか。この他にも愛国を叫びながらも日本を危うくする偽装保守について書かれていますので、是非詳しくは手に取ってお読みください。

・田母神有罪の証拠のはずが実は…

 公職選挙法違反で逮捕・起訴されたた田母神さんの裁判。前作の『不徳を恥じるも私心なし』を読んだ時も感じた事ですが、何しろ2年以上前に起きたことを、何月何日に何があったのかを各自が思い出しながらの供述なので、非常にあいまいなものになっています。

 現在、判決文が公開されていないため、何が田母神さん有罪の証拠とされたのかが定かではないのですが、P234の記述で、田母神さんの元部下が報酬を受け取る以前、平成26年2月中に田母神さんが増額を指示したという供述があり、それが田母神さんが報酬配布を事前承認した証拠とされたとされたようです。しかしながら、その部下が田母神さん、水島社長と共に念法眞教に選挙後の御礼の挨拶に行き、電車の中で水島社長が「選挙資金の残金を『頑張れ日本』の口座に移してはどうか」と提案したのを聞いていたのが2月28日。事務局長が報酬配布の話をANAコンチネンタルホテル東京で田母神さんに初めてしたのがその数日後(元部下は少し離れた位置でそれを見ていた)。そうすると増額の話を2月にしたというのが時系列で考えるとおかしいことがわかります。

 そして、報酬の支払いに反対して事務局長に再検討を指示した点も、その再検討の結果を確認しなかったのが不自然、不合理とされたそうですが、田母神さんは「選対本部長と相談してくれ」と言った後、その報告を事務局長から受ける前に、元部下から報酬を受け取った御礼を言われたのです。報告待ちだったものが、事前に配られてしまった形なのに再確認しなかったのがおかしいというのも無理があるように思われます。

 このあやふやな関係者の記憶で進められた裁判の中で、日付の特定できるものもあります。それは事務局長と水島社長の会った日で2014年2月27日と3月19日です。この3月19日の会合、それに伴い会計責任者が田母神さんに3月20日に送ったメール、そのメールを見て田母神さんが「困惑した」。このメールの件でチャンネル桜内で水島社長は自分がお金を配ったことに関与していなかった証拠だ言わんばかりに大喜びしていました。これに関してですが、私には最終的に水島社長はお金を配ることには了承しなかった、しかしながらこれこそがお金に対する権限が水島社長にあったことの証拠だと思うのです。こちらは本の感想の範囲を越えるので別で詳しく記事にしたいと思います。

 上に述べた通り、こちらの本では使途不明金疑惑や先日まで行われていた裁判に関して、現在メディアで報道されている以上のことを具体的に知ることが出来ます。是非、前作の『不徳を恥じるも私心なし』と合わせて読むことをお勧めします。某ネット放送が如何に偏向したものだったのかがはっきりと知ることが出来ますので。彼らは、田母神さんの言い分が嘘で、後に裁判記録が公開されたら恥を書くことになると言っていますが、さて、嘘を言っているのはどちらでしょうか。

 ※こちらの記事は平成29年6月30日に書かれたものです。

 

 

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