倉山満 大間違いの太平洋戦争 感想

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 今年出る予定の戦争3部作の1作目。まずタイトルが気になるところ。なぜ倉山先生が大東亜戦争ではなくGHQに押し付けられた太平洋戦争という敵性用語をつかうのか?

 倉山先生の本は、まず出だしから驚かされることが多いのですが、なんとこの本は表表紙から目からうろこの連続です。そして本文、太平洋戦争という言葉は敵性用語というだけでなく、なぜ使ってはいけないかがわかります。今回の本もいきなりタイトルから間違っているという話。

 倉山先生の本はいつも私たち日本人の先入観や誤った歴史認識に基づくコンプレックスからの解放のため、という側面で書かれているものが多いのですが、今回は何について私たちが間違っているのか。それは非力な日本が大国アメリカに無謀な戦争を仕掛けたという、いわゆる「太平洋戦争への道」(朝日新聞)史観、なぜ日本はアメリカと戦争をしたのだろう、という問題意識自体が間違いだと言います。そして、この戦争を日米関係ではなく、日英関係から読み解くという今までになかった視点で読み解いています。

 私の知識不足からくるものではあるのですが、大東亜戦争はつい対米戦争という視点から考えがちで、対英戦争として考えたことは全くなかったのでこの本は驚きの連続でした。開戦の最終的な要因はアメリカの経済制裁、およびハルノートかもしれませんが、確かにそれだけであのような世界中を巻き込むような戦争になるわけはないのですね。

 倉山先生の書く本なのでもちろん、自虐史観満載の「日本の侵略ガー!」という本ではありません。そして「白人たちからアジアを解放するための聖戦だったのダー!」という本でもありません。正直に言ってしまうと、なぜここでこんなことをしてしまうのだ、なぜここまで来てうまくやってきたことをひっくり返してしまうのだ、と読み進むために暗澹とした気分になる場面も多々あります。倉山先生は、正論が封殺されるとき国が亡ぶといいますが、まさにそうやって大日本帝国は滅んでしまったのですね。

 今回の本には謀略についてはあまり触れられていませんが、どこかで大日本帝国を滅ぼそうとしている人々の策略があったのではと思わざるを得ない部分、というよりも、いっそスパイの謀略があったとするほうが、日本人として気が楽になるのにと思ってしまうところがあります。しかし謀略があったにしても、これは日本人自身が起こしてしまったもの、その反省がなければ次にも同じ間違いを犯してしまうでしょう。

 巻末に日露戦争後の日本の指導者層のやりとりを簡潔にまとめたものがあるですが、笑えるようで泣けてきます。こんな風にして我が国は滅びの道を歩んだのかと。しかも、今の私たちはこれを笑えるのでしょうか?日本はつい最近まで、私たち自身が選んだ結果として民主党政権というひどい政権を生んでしまいました。その後、安倍政権が誕生して、うって変ったように経済が回復したかと思えたとたん、平成25年10月に消費増税の決断、そして、平成26年には消費税は8%になってしまいました。今、いろんな悪い数字が出始めています。増税をしても税収は増えない、景気は腰折れする、誰もわかっていたことなのになぜ安倍首相でもこれを止めることができなかったのでしょうか。

 歴史は、過去の出来事を反省し、今生きている私たちがよりよく生きるために学ぶものだと思います。私たちは今後正しい決断をすることができるのか。一人一人が考えなければいけないことだと思います。

※こちらの記事は平成26年8月3日に書かれたものです。